くば》ヶ岳《たけ》のお花畑でございます、まあ、この美しいとも何とも言いようのない花の色をごらんなさい」
後ろから呼ぶ声で、顧みると、それはお雪です。花の色を見る前に、竜之助はお雪の姿を見ないわけにはゆきません。
この娘の姿といっても、面《かお》といっても、かねて潜在の実印象が少しもあるのではありませんが、竜之助は、直ちにその娘が、お雪だとわかりました。
それは、声だけでも無論わかるはずですが、この時は、面《おも》だち、その姿、それがお雪でなければならないと思いました。
黒い髪の毛を洗い髪にして、白い面《おもて》に愛嬌《あいきょう》をたたえている、その無邪気にして、魅力のある面《かお》が、お雪ちゃんでなければならないと思いました。
ことにその着物をごらんなさい。自分の白衣《びゃくえ》も、鶴の羽のような白いかがやきに見えますが、お雪ちゃんのその衣裳は、百練の絹と言おうか、天人の羽衣《はごろも》といおうか、何とも言いようのない白無垢《しろむく》の振袖で、白無垢と見ていると、裾模様のように紫の輪廓の雪輪《ゆきわ》が、いくつもいくつもその中から、むら雲のように湧いて出るのを見受けます。
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