そばしてはいけません、どうぞお放し下さい」
お雪には、その押えられた手の主が誰であるか、見当がつかないらしい。
ここには多くの男性がいる。否、自分一人を除いては、すべては男性であって、そのうちにはかなり異種類の人が雑居しているのだから、そのうちの誰の手と見当のつけようのないのもぜひがないでしょう。
しかしながら、池田良斎の一行の人たちの中には、かりにもこんな無作法な人はひとりも無い。留守番や、猟師たちの人は、質朴な山気質《やまかたぎ》の人たちで、自分たちに一目も二目もおいて、敬意を表していようとも、こんな無作法を働く人はひとりもない。
当惑の限りを尽したお雪は、大きな声で叫びを立てて、救いを求めようかとさえ思いました。
しかし当座のいたずらでするものを、そうまでするも、たしなみがなさ過ぎるように思って我慢をし、
「どうぞお放し下さい」
「は、は、は、は」
と、はじめて高笑いしたが、手はまだ放そうとしないから、
「お放し下さらなければ、人を呼んで助けていただきますよ」
「は、は、は、は、誰だかわかりますか」
その声は太い声でしたが、それでもまだ思いあてることができない。
「
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