しゃいましたか」
「わっしですか、わっしは常陸《ひたち》の水戸在のものでございますよ」
「上方《かみがた》へおいでなさるんですか」
「ええ、上方の方へ出かけて、帰り道なんでございますよ」
「講釈がお好きですか」
「嫌いでもありません、まあ、英雄豪傑の話や、忠臣義士の事柄を聞いていると、見て来たような嘘と思いながら、悪い気持はしませんですよ」
「あなたの御商売は何ですか」
これは随分ぶしつけな問い方でしたけれども、お角はこういって突込んでしまいました。つまりお角としては、大抵の人品は見当もつき、判断もつくのですけれど、この男はどうも判断のつき兼ねるところがあったと見え、そのもどかしさから、一息に、無遠慮に、突込んでみたものでしょう。そうすると、その男は笑いながら、
「何と見えますか。わかりますまい、さすがのお前さん方にも、わっしの見当はつきますまいね」
「つきませんね、おっしゃってみて下さい」
「言ってみましょうか」
「どうぞ」
「その以前に、あなたの名を言ってみましょうか――お前さんは、江戸の両国の女軽業の太夫元、お角さんていうんでしょう」
「おや」
「驚いちゃいけません、よく知って
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