階級に属しているようなところもあるし、そうかといって両刀は帯びていないが、道中差は一本用意している。
 寄席《よせ》へ来るに道中差を用意するほどのこともなかろうが、なお左の膝の下に合羽《かっぱ》を丸めているところを見ると、たしかに旅の者だ。旅の通りがけに、この席へ立寄ってみる気になったもので、いったん旅籠《はたご》へ着いて出直したものではない。それにしても、何であんなにニヤニヤ笑いながらやに[#「やに」に傍点]さがって、講釈師の面ばかり見ているのだろう。べつだんイヤ味があるではないから、イヤな奴とは思わないが、変な男だと見るには充分です。
 そのうちに一席が済んで、つまりこの講釈師は、長講二席のうちの前講一席が済んで、暫く高座が空虚になった時分、変な男が、チラリと横を向いて、お角に話しかけて来ました、
「南洋軒力水なんて講釈師が江戸にありましたかねえ」
「聞きませんねえ」
 お角は透《す》かさず応答しました。
「わたしも、あんまり聞きませんが、旨《うま》いには旨いですね」
「気取らないところがようござんすよ」
「そうです、あいつは素人《しろうと》ですね」
「あなたは、どちらから、いらっ
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