大菩薩峠
めいろの巻
中里介山
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)白骨《しらほね》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)本来|蒼白《そうはく》そのものの
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「魚+生」、第3水準1−94−39]
−−
一
信濃の国、白骨《しらほね》の温泉――これをハッコツと読ませたのは、いつの頃、誰にはじまったものか知らん。
先年、大菩薩峠の著者が、白骨温泉に遊んだ時、机竜之助のような業縁《ごうえん》もなく、お雪ちゃんのようにかしずいてくれる人もない御当人は、独去独来の道を一本の金剛杖に託して、飄然《ひょうぜん》として一夜を白槽《しらふね》の湯に明かし、その翌日は乗鞍を越えて飛騨《ひだ》へ出ようとして、草鞋《わらじ》のひもを結びながら宿の亭主に問うて言うことには、
「いったい、この白骨の温泉は、シラホネがいいのか、シラフネが正しいのか」
亭主がこれに答えて言うことには、
「シラフネが本当な
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