いるんですよ、裏宿《うらじゅく》の七兵衛から聞いてね」
「七兵衛さんから?」
「ええ、七兵衛につれられて行って、お前さんの小屋も見ているし、お面《かお》もよそながら拝んでいる、私は水戸の山崎、山崎譲ってたずねれば、七兵衛がよく知っていますよ」
 お角がすっかりけむにまかれてしまっている時に、第二席、長講の御簾《みす》があがる。
 御簾が上って、以前の南洋軒力水先生が再び現われて長講をつづけるかと思うと、そうではなく、みすぼらしい盲人が一人、三味線を抱えて、高座へ現われ、これから説教浄瑠璃の一段を語り聞かすとのことです。
 そこで山崎譲は一笑して、帰ろうとしますから、お角もこれ以上、観察する必要もないと考えて、同じように席を立ちました。しかし一般のお客には、前の講釈よりも、この説教節がききものであると見えて、一人も座を立つものがありません。
 お角は、山崎譲という旅人と連れ立って宿まで帰る途中、
「は、は、は、あれは素人《しろうと》も素人、南条力といって九州あたりの浪人者ですよ、とっつかまえるとことが面倒だから、茶々を入れて、邪魔をして、けむにまいて追払うだけが、われわれの仕事というもの
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