越えたり、十二間の遠侍《とほざむらひ》、九間の渡廊、釣殿、梅の壺、桐壺、まがき壺に至るまで、百種の花を植ゑ、守殿十二間につくり、檜皮葺《ひはだぶき》にふかせ、錦を以て天井を張り、桁、梁、木の組入には、白銀黄金《しろがねこがね》を金物に打ち、瓔珞《やうらく》の御簾《みす》をかけ、厩《うまや》、侍所に至るまで……」
[#ここで字下げ終わり]
これは大変なものだ、と兵馬が思いました。
なるほど名こそ物臭太郎だが、この住居の結構は藤原時代で、三公を凌《しの》ぐものだ、なるほどと、兵馬が深く思い入れをした様子を見て神主は、ちょっと朗読を中絶して、
「大したものでござんしょう、これでは平安朝時代、藤原氏全盛の頃の並びなき公卿《くげ》さんのお住居です、物臭太郎が、こういった宏大な家に住んでいたと思うと不思議でございましょうが、まあ、もう少しこの先をお聞き下さい、いいですか」
[#ここから1字下げ]
「厩《うまや》、遠侍に至るまで、ゆゆしく作り立てなさばやと心には思へども[#「なさばやと心には思へども」に傍点]、いろいろ事足らねば[#「いろいろ事足らねば」に傍点]、ただ竹を四本立ててぞゐたりける[
前へ
次へ
全373ページ中68ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング