巻物を繰りひろげ、
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「東山道、みちのくの末、信濃の国、十郡のその内に、つくまの郡《こほり》、新しの郷《さと》といふ所に、不思議の男一人はんべり、その名を物臭太郎ひぢかず[#「ひぢかず」に傍点]と申すなり……」
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 ここで兵馬は、ははあ、物臭太郎にも名乗りがあるのだな――物臭太郎ひぢかず、ひぢかず――という字は、どう当てるか知らないが、ともかく、物臭太郎も名乗りを持っているということを、この時はじめて知りました。
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「ただし、名こそ物臭太郎と申せども、家づくりの有様、人にすぐれてめでたくぞはんべりける……」
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と読まれて、では、名こそ有難くはない名だが、家はこのあたりの豪族にでも生れたのだろう。そうしたものかと考えていると、神主はすらすらと読み続けて、その宏大なる家の構えぶりに抑揚をつける。
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「四面四方に築墻《ついぢ》をつき、三方に門を立て、東西南北に池を掘り、島を築き、松杉を植ゑ、島より陸地へ反橋《そりはし》をかけ、勾欄《こうらん》に擬宝珠《ぎぼし》を磨き、誠に結構世に
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