ろなのです、あなたこそ、どうして、今時分、こんなところへ、お一人でおいでになりましたのですか」
「エエ、わたしはね……逃げて来たのよ」
「火事でございますね」
「エエ」
「火事は、お屋敷うちには違いございませんが、どなたかのお住居《すまい》ですか、それとも納屋か、厩《うまや》か、土蔵か、物置かでございましたか」
「あのね、弁信さん、火事は本宅なのよ」
「御本宅――」
「エエ、そうして、わたしの屋敷へも移るかも知れない、あの火の色をごらん」
「それは大変でございます、それほどの大変に、どうして、あなた様だけがお一人で、こっちの方へ逃げておいでになったのですか、あとのお方には、お怪我はありませんか」
「それは知らない、わたしは怖いから、わたしだけが逃げて来ました」
 そういって、お銀様は立ちどまったままで、後ろを顧みて、竹の藪蔭《やぶかげ》から高くあがる火竜の勢いと、その火の子をながめて、ホッと吐息をついた時、弁信の耳には、それが早鐘《はやがね》のように聞え、その口が、耳までさけているように見えましたものですから、
「ああ、お嬢様、あなたは怖ろしいことをなさいましたね」
「ええ」
「あなた
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