ている野原の中の一つの姿も見え、そうして、その背後に、大竹藪《おおたけやぶ》が屏風《びょうぶ》をめぐらしたように囲んでいるのもわかりました。
「間違いがなければいいが――」
彼の懸念《けねん》は的中したに相違ないのです。現に間違いが起ったればこそ、あの火の色。あれは尋常の火ではありません、非常の火であります。
その時分にはじめて、人の叫喚が夥《おびただ》しく聞えはじめました。ボーッと明るかったに過ぎなかった火が、炎のうらを見せはじめると、その赤味が天に冲《ちゅう》して来ました。梨子地《なしじ》をまいたような火の子が、繚乱《りょうらん》として飛びはじめました。
そう思うせいか、ちょうど、この時分になって四辺《あたり》がザワついてきて、藪《やぶ》も、畑も、山も、林も、吹きまくるような風に襲われてきたようです。そうでなくても火事場は風の多いものを、ここに心あって吹く業火《ごうか》でもあるかのように、一時に襲い来った風のために、弁信の纏《まと》うていた黒の法衣《ころも》を吹きめくられて、白衣《びゃくえ》の裾が現われてしまいました。
「悪い風だ、悪い時に――」
と弁信は憂《うれ》え面《がお
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