れ》うるが如く、教うるが如き低音でありました。一向に返事のないことを予期して、そうして弁信が、おもむろに続けました。
「お嬢様、あなたが、むらむらと瞋恚《しんい》の炎を燃やして、身も、世もあられず、お怒りになるそのお心が、離れていても、ぴたりと私の胸に響いて参ります。あなたの胸に燃やしておいでになる憤怒のほのおが、遠く私の魂をも焼くのでございます。人間の煩悩《ぼんのう》妄想《もうそう》のうち、憤怒《ふんぬ》の一念ほど、人の魂を焼き亡ぼす力のあるものはございませぬ。その怖ろしい力のために、海の潮が満引《みちひき》をするように、あなたのお心のうちが、日夜に動揺致しますのを見るにつけ、どうぞして、そのお腹立を和《やわ》らげ、そのお憤りの心をしずめてお上げ申したいと、思わぬことはございません」
と言いながら、弁信はソロソロと歩みはじめました。
「あ、いけません、それが悪うございます、それですから、あなたのその憤怒の心に油が加わるばかりでございます、消えるどころではない、いよいよ燃え上るばかりでございます、そういうことをなさるから、それで……あなたの身と、魂が、ジリジリと燃焼して参り、やがてそれ
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