に心服しておりながらも、どうかすると、そのいけずうずうしいことに業《ごう》を煮やすことはありながら、人命を扱うことにおいて、茶飯を食うような手軽さと、周到にして抜かりのなかりそうな用意のほどを見ると、おらが先生はエライ、と舌を捲かないということはありません。
 道庵はこれだけの仕事を、極めて無雑作に済まして、それから、焚火の傍へよって、かます入の煙管《きせる》を取出して火の中へつっ込み、しゃがみ腰になって、一ぷくつけてすまし込んでいると、そこへ人気が立ち上りました。
 当座の人気とは言いながら、さほどの名医が来合わせたということが、稲妻《いなずま》のように宿の上下にひろがったと見え、ぜひ一度、先生に来てみていただきたい、先生に見ていただきさえすれば、病人がその晩に死んでも心残りはないという注文である。先生、お急ぎでなければ、拙者は信州の飯田の者でござるが、飯田まで御足労が願えますまいか――と申し出でる者もある。今晩はぜひ手前共へお泊り下さるようにと、招待の競争が起る。
 しかし、最も多くの感謝と、尊敬とを払っていたものは、現に被害者を出して救われたところの、尾州家の木曾の御料林の見廻り
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