そうして彼は、臨川寺の門に程近いところまで来ると、どうも再びその門の中へ踏み込んでみたくなりました。
 ここは、もう一応確めてみねばならぬところだと思いました。

         二十九

 宇治山田の米友をして、こんなにまで気を揉《も》ませておきながら、道庵先生は何をしている。ちょうど米友が寝覚の床の一枚岩の上に立ちはだかった時分に、先生はようやく臨川寺《りんせんじ》の方丈に着きました。そうして、方丈の毛氈《もうせん》の上へ坐り込んで、そこで寝覚の床の全景を見下ろしながら、早くも一瓢《いっぴょう》を開いたものです。
 道庵先生と相対している、同じ年配の、頭だけを僧体にした見慣れない人品《じんぴん》が一つあります。これはこの寺の方丈ではありますまい。頭を丸くしているところから推《お》してみると、御同職のお医者さんであるらしい。この辺に何かの縁で知己のお医者さんがあったのか、そうでなければ途中、ゆくりなく旧知同職にめぐり逢って、ここまで相伴うたものか、もしまた医者でないとすれば、俳諧師とか、茶人とかいったような人で、人品から言って僧侶でないことは明らかです。
 道庵はと見れば、こ
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