緒につれ立って影の形におけるが如くあるべきはずの、また今日まであって来たところの先生が、この時、この際、先生でなければならない時、その先生ありさえすれば、死ぬべき人が生きて助かるべき際……いないじゃないか。
「ちぇッ、世話の焼けた先生だなあ、人に助けられるばかりが能じゃねえや、ちっとは人も助ける気になれねえものかなあ」
 米友は、五たび、六たび、そこで地団太を踏みました。ほんとうに米友の口惜《くや》しがる通りです。尋常に自分も道庵先生のともをして歩きさえすれば、こういうところには、思いきり溜飲《りゅういん》が下げられたものを。自分たちが溜飲を下げて痛快を買うのみならず、人の一人が立派に助かって、その功徳《くどく》と感謝は、測り知らるべきものでもないのに、みすみすその機会を逸して……口惜しい。人を打懲《うちこ》らし、取挫《とりくじ》くの力においては自信の有り余る米友が、人を救う段になると、溺死人の一人をどうすることもできないのを、身も世もあらぬほどに口惜しがって、
「ちぇッ、その立派な医者を、おいらがひとつ探して来るから、それまで死なさねえようにして置きな」
と言い置いて米友は、驀然《ま
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