っしぐら》に走り出しました。
どこを当てともなく走《は》せ出しましたが……このいい残して置いた言葉は無理です。
道庵先生、いかに神医なりといえども、いつどこで探し出されるか知れないものを、そのあてどのない尋ね人を探して来るまで、死ぬべきものを死なさずに置けとは、米友の注文が無理です。
扁鵲《へんじゃく》もそう言っている、「越人《えつじん》よく起すべき者を知って之《これ》を起す」
しかし、無理であってもなくても、火の玉のようになって飛び出した米友を、如何《いかん》ともすることはできません。
坂をかけ上ると、そこで、土地の人のふるえながら語るのを聞きました。
「尾州様の、お山係りの殿様が水にはまっておしまいになった、医者を、医者を、とおっしゃるけれども、尾州様の御家中の脈をお見せ申すような医者が、この宿《しゅく》にはござらねえ、山竹老へ持ち込んだら、おぞけを振《ふる》って、もしやお見立て違いをしては首が危《あぶ》ねえといって、逃げてしまった、藁火《わらび》をたけとおっしゃるが、ここは山里で藁というものがござりましねえから、今、畳をむしりこわしているところでございますよ」
それを
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