、かなり無遠慮に近寄って、現在の被害者をまともに見舞いました。それは只今、川から引き上げられたままの一人の若い、この武士階級の仲間のうちでもかなり身分のありそうな若い人が、引き上げられて正体なく、沙上《さじょう》に置かれていると、それを取囲んで、
「御主人様」
「鈴木氏」
「気を確かに持たっしゃい」
「おーい」
「鈴木氏――おーい」
口々に叫んで、それを呼び生かそうと努力することのほかには、他念がないらしい。
呼び生かそうとは努力するが、その努力は狼狽《ろうばい》を伴っているから、いずれも無効です。努力すればするほどに、要点を外《はず》れてしまって行くのです。
「火を、早く火をお焚き下さい」
「おい、早く焚附を、薪を持て」
「薪ではいけない、藁火《わらび》を……藁を」
彼等は口々に騒ぐけれども、この武士階級を取巻いている土地の人が、かなり輪をかけた狼狽ぶりで、ほとんど物の用をなさないらしい。
「何よりも早く医者を、医者を呼べ、医者を呼ぶことが急務だ」
喧々囂々《けんけんごうごう》として、騒いで且つ狼狽するがために、いよいよ救急の要領を外れ、努力の能率がみんな空費されてしまうこと
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