なすったって……なるほど、剣を売って犢《とく》を買うということもあるにはあるが」
 両手を胸に組んで考え込むと、しおれ[#「しおれ」に傍点]きったその男が、
「ことし十七になる娘を、上松《あげまつ》の茶屋へ奉公に出しまして、それで、この福島で馬を買いましたが、奉公とはいえ、十七になる娘に身売りをさせたのでござります、馬は連れて国へ帰れますけれど、娘は連れて戻ることができませんでございます」
 そこで、また男がしくしくと泣き出しました。
「なるほど」
 道庵も仔細らしく考え込んでいると、男が、
「馬を買わなければ、家がたちゆきませんし、娘を売らなければ、馬が買えないのでございます、その娘だって、あなた、くどいようでございますが、ただの奉公ではございません、勤め奉公でございますから、泊り泊りの客人にいいようにされ、しまいには悪い病気にかかって死ぬか、そうでなくても、年《ねん》が明けていつ帰れることやらと思いますと、それがかわいそうになりまして、つい、どうも、お耳ざわりになって、相済みませんことでございます」
「なるほど」
 道庵も少し真顔《まがお》に考え込んでいたが、やがて声の調子を一本上
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