その馬が物を食う代りに銭を取らあな、いくらか銭を取って、家の暮しの足しになるだろう、だからお前、今ここで血の出るような金を出して馬を買い込んだところで、それが忽《たちま》ち利に利をうむという勘定になるんだろう、そうがっかりすることはなかろうじゃないか、気を確かに持って、前途に望みをかけなくっちゃいけねえ、いやに悲観しなさんなよ」
と道庵が、慰めはげますような言葉で、親切にいい聞かせたつもりでしょう。しかし、よく聞いていると、この親切な言葉のうちにも、論理の不透明なところが無いとはいえない。第一、相当の年配になれば誰だって貧乏すらあな……という一句の如きは、かなりの独断であるけれど、その男はいちいち頭を下げて、
「御尤《ごもっと》もでございます、おっしゃる通り、私は道楽で馬を引きに参ったわけではございません、貧乏暮しのうちに馬一頭が、杖《つえ》とも、柱とも、でございます。どうしても、馬が無ければ立って行かない一家なんでございますから、それがために……お恥かしい話ですが、娘を売って馬を買いましたんでございます」
道庵は仰山に驚いて、眼を円くして、
「何とお言いなさる、娘を売って馬をお買い
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