げて、
「なるほど、それは人情だ、娘を売って馬を買う、娘を売らなければ馬が買えない、馬を買わなければ一家が養えない、一家を養おうとすれば馬を買わなければならん、馬を買うには娘を売らなければならない、娘を売るのはつまり、娘を殺すというようなわけ合いになるんだから、つまり動物のために、人間を犠牲にするという理窟になるんだな。ところでその動物がまた、お前さんの一家を救うということになるんだから、動物のために人間が救われるという理窟も、立てれば立つ。しかし、なお考えてみると、人間を立てれば動物が立たず、動物を立てれば人間が立たない。さあ大変、忠ならんとすれば孝ならず、ここは、一番、道庵も考えどころだぞ」
といって、いよいよかたく腕組みをしてしまいました。しおれ[#「しおれ」に傍点]きった男は、それでもいっこう浮き立たず、
「せっかくの御心配を下さいましても、どうももう仕方がございません、娘は売ってしまったもの、馬は買ってしまったものでございますからなあ」
「そこだよ、そう物を早くあきらめてしまっては何にもならねえ、そこんところを、もう一応考え直してみねえことにゃ、せっかく道庵が乗出した甲斐がね
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