しだから、わしに打明けて話してごらんなさい、わしも長者町の道庵だ」
といって、中へ乗込んでしまいました。
「恐れ入りました」
 中なる男は、かなり迷惑しているらしい。長者町の道庵だと名乗ったところで、長者町界隈でこそ押したり、押されたりするが、木曾の山の中へ来てそれが通ろうはずがないのを、道庵はいい気になって、早くも、その男の向う前へ坐り込んでしまい、
「見たところ、お前さんも男として、そうしてしくしく泣いていなさるというのは、よくよくのことだろうとお察し申す、まあ、話してみな……悪いようにはしないから」
 道庵は持合せのきせるを取って、すっかり長兵衛を気取ってしまいました。
「それではお恥かしい話でございますが、お言葉に甘えまして、身の上話を一通りお聞き下さいまし」
「なるほど」
「わたくしは美濃の国の落合というところの百姓でございますが、この福島へ馬を買いに参りました」
「なるほど」
「望みの通り、この福島で、三歳の毛附駒《けつけごま》のこれならというのを買うには買い求めましたんでございますが……」
「馬を買いに来て、望み通りの馬が買えたんなら、なにも不足はなかろうじゃございません
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