た。
一方、道庵の方から言えば、折角こうして、十八文をチビチビ貯めて旅へ出たことではあるし、町内でもともかくも先生扱いをされている手前上、そう無茶な発展もでき兼ねていたのが、無係累の旅へ飛び出したのですから、多少の人間味がわき出して来るのは、ぜひもないことでしょう。
泊り泊りで渋皮のむけた飯盛《めしもり》を見れば、たまには冗談《じょうだん》の一つもいってみたいのは人情でありましょう。
ところが、米友というものが、前後左右に眼もはなさず頑張っているから、たまらない。
そこで、多分、夜中に、米友の寝しずまった頃をうかがって、そっと抜け出して、戸惑いをしてみたことが、一度や二度はあるのだろうと思われます。しかし不幸にして相手が米友ですから、眠っていても畳ざわりの音で眼をさます。そうして、道庵の脱線を難なく取押えてしまう。取押えられる度毎に、道庵は手のうちの玉を取られたほどに残念がることも、一度や二度ではなかったらしいが、そこはうまくバツを合わせて、米友を言いくるめてしまっているらしい。
そうなると、米友の責任観念がいっそう強くなって、警戒ぶりがいっそう厳重を加えるものですから、道庵
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