なく受取ったのみならず、幾分、良心に疚《やま》しいところのあるような歯切れの悪い返答ぶりが、いつもとは少しく調子が変っているのだが、誰もそれを、この場でとがめる者はありません。
米友は、一旦、寝床にもぐり込もうとしたが、また起き直って、荷物と、槍とを、念入りに一応調べて枕許《まくらもと》へ置き並べると、襖《ふすま》を隔てての道庵が、
「べらぼう様、這い出してみたところで、そう易々《やすやす》と落っこちる道庵とは、道庵が違うんだ」
と、寝言のように言いました。
米友が道庵先生に対して、特に夜中に這《は》い出しちゃあいけねえぜと、警告ようの文句を与えたのは、かなり意味深長なものが、あるといえばあるらしい。
それをいうと、道庵先生の人格に関するようなものだが、実は先生、旅へ出て、調子づいて脱線をやり過ぎることがあります。むしろ脱線が無ければ、道庵が無いといいたいくらいだから、道庵の脱線は天下御免のようなものですけれど、米友が眼に余ると見ている脱線ぶりは、自分の信じている従来の道庵の脱線ぶりとは、全く性質を異にしている脱線ぶりですから、米友が苦《にが》い面《かお》をして、警戒をはじめまし
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