松さんが持って来ました」
「お松さんが、どこから持って来たの?」
「それは知らねえ」
「ふーん」
と七兵衛は、お茶を手に取って飲みながら、首をかしげないわけにはゆきませんでした。
七兵衛は、与八のことは知っているか、いないか知らないが、お松のこの地にいることは、充分に知っているはずである。このあたりの地理も、人情も、知って、知りぬいているはずだから、自然、この水車小屋も、机の家のものだということは心得ているに違いない。そうしてみれば、お松とはあれほどの縁故だから、そのいどころをたずねて、充分に話はわかっているはずである。
しかし、与八は、お松の家へこの人が尋ねて来たのを見たことがないから、従って、この人と、お松とが、深い縁故になっていることなんぞは知ろうはずはないらしい。お松がここにいることを知って尋ねない七兵衛には、また七兵衛だけの遠慮があるのでしょう。お松の方でも、程遠からぬ七兵衛の実家を尋ねたということをあまり聞かないのは、尋ねても、その都度都度《つどつど》、行方《ゆくえ》が知れないからでありましょう。
「若い衆さん、お聞きなさいよ」
お茶を飲み終った七兵衛は、悠々《ゆうゆ
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