がってから再び、小屋の隅々までも見廻して、
「誰だい、誰かへえ[#「へえ」に傍点]って来たのかね」
どうも、立去り兼ねるものがある。
「待てよ」
そこで与八は提灯《ちょうちん》に火をうつして、裏の戸口のところへ行って、仔細に、戸と、その板の間のあたりとを、提灯の光で照らして見ました。
それは争われない。尋常の板の間ならば何でもないことですけれど、水車小屋の板の間ですから、粉と糠《ぬか》で、霜を置いたようにいっぱいに塗られてあるところですから、そこに手足の指のあとと、着物で掃かれた粉末の飛散のなごりをとどめないというわけにはゆきません。
「いる、いる、たしかにこん中に、人がいるに違えねえだ」
と与八が声を立てた時、後ろから与八の首へ、すっと一筋の縄が巻きつきました。
その縄に巻かれると、大力の与八が、もろくも囲炉裏《いろり》のそばまで引き戻されてしまいました。それは拒《こば》めば首がくくられるからです。自分の力で、自分の首をくくられるのがいやならば、おとなしく、引かれる方へ引き寄せられるよりほかはない。その点においては、与八は天性心得た無抵抗の呼吸を、のみこんでいるもののようでも
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