め物の絵馬《えま》です。そこらの辻堂の中あたりにいくらも見られる絵馬であることは確かだが、絵馬だからといって、踏み砕いてしまったのでは相済まない。修繕の工夫はないものか知らんと、知らず識《し》らず与八は、もうすでに片肌ぬぎになっていた絵馬の全身を露出させてしまって見ると、無残にも、それはホンのハズミに踏んだばかりですけれども、与八の馬鹿力で一たまりもなく、真二つに踏み裂かれてしまっていて、繕《つくろ》うべき余地もありません。
済まないことをしてしまった。せっかくお松さんが大事にして持って来たものを、自分が足にかけて踏み砕くなんて……そんなところへ置いたものが悪いか、それを踏んだ者が悪いかは考えずに、与八は只管《ひたすら》に、自分のみが悪いことをしたと恐懼《きょうく》して、行燈の下へ持って来て、ひねくってみましたが、その時まで閑却《かんきゃく》されていたのは絵馬の面《おもて》です。それは与八が血のめぐりの悪いせいばかりではありますまい、大抵、この類《たぐい》の絵馬の模様というものはきまりきったもので、特別の注意を惹《ひ》くべき絵であろうはずもなく、また描き方も尋常一様に、板に乗っていた
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