の与八の生立《おいた》ちは、当人にも、周囲の人たちにも、わかり過ぎるほどわかっているにかかわらず、今以てわからないのは、それは与八を捨てた人です。この子を捨てたのは誰だ――弾正はあまり強《し》いて、それを探索させようとはしませんでした。どのみち、子を捨てるくらいの親には、親として忍びない事情と、理由があるに相違ない。それを探索して、当人に引渡してみたところで、どれほど両者の幸福が回復するのだろう。
 そこで、弾正は、自分が拾った以上は、自分に授かったものだ、よかれ悪しかれ、この子の運命を見届けようではないか、という気になって、自分の子と同様に、可愛がって育ててやったものです。
 体格が異常に発達し、力が一年増しに強くなるに反して、知恵の廻りが遅いことを認めて弾正は、いっそう不憫《ふびん》がりました。弾正の心では、もし普通の人間に生れついていたならば、わが子の竜之助と同じように、教育を与えたことでしょう――しかし、こんなふうに生れて、頭が器用に働かず、好んで労働に当り、力役《りきえき》を苦としないから、あつらえ向きの水車番――
 それで、ああして、こうなって、今日に至っているが、お松がそ
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