れを知ってみると、どうしても与八のために、生みの親を探してやりたい――という同情に駆《か》られてしまうのも無理はありません。実は、今日もここへ来たのは、それが主なる目的なのであります。ここへ記念のお堂と、石像を立てさせたのも、これが縁になって、何か与八の生みの親をたずねる手がかりにはならないかと思い立ったのも、その一つの理由でありました。
 与八が特志の草鞋《わらじ》を、地蔵堂の軒にかけてしまってから、お松は堂内を仔細に見廻しました。見廻したといっても、さして広くもなんともない堂内のことですから、そこには、いつ、誰がするともなく、たくさんの絵馬《えま》が納められてあったり、達磨様《だるまさま》の古いのや、昨年来の御幣《ごへい》や、神々のお札や、髪の毛の切ったのが髢《かもじ》なりに結えられてあったりするだけのものでしたが、そのなかでただ一つ、異様にお松の眼についたものがあります。
 まだ、ほんとうに新しい、この中ではいちばん新しい絵馬が一つ、わざとしたようにお地蔵様の首にかけられてあるのを、お松が異様なりと認めました。それは狭いお堂とはいえ、絵馬をかけるには、おのずからかけるだけの場所が
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