す」
 金公は両手を合わせて、お絹を拝んだけれども、お絹はいっかな聞かず、その火を金助のふところへ投げ込んでしまったから、金助が飛び上ったところへ、あまりの騒がしさに、障子をあけて、
「いったい、何事が始まったのです」
と現われたのは七兵衛です。
 七兵衛が現われたために九死の境を逃れた金公は、血相を変えてこの席を飛び出して、それでも今度は間違いなく、自分の穿物《はきもの》をさらって、門の外へ走り出してしまいました。

 ややあって、神尾主膳は安達のところへ碁を打ちに行こうとして、ふと湯殿の側を通りかかると、そこで思いがけない人の話し声を聞きました。思いがけないといっても、全然、頭にない人の声ではなく、あり過ぎるほどある人の話し声を、意外なところで聞いたものですから、それでかえって足を留めないわけにはゆかなかったのです。
 というのは、その湯殿の中で、遠慮なく話し合っているその声は、お絹と、七兵衛の二人であったからです。お絹と、七兵衛と、話をする分にはなんでもないことで、いつでも無遠慮に話し合っていることだが、今朝はこれが湯殿の中だけに妙であります。
 そこで立聞きをするつもりではない
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