鉢の中へ納めた火の、かんかん熾《おこ》ったのを二度《ふたたび》、火箸の先でツマみ上げて、今度はいささかの情け容赦もなく、ゾロリとした羽織の袖をひっぱった上へ載せると、ゾロリとした羽織がジリジリと音を立て、むんむんと臭いと煙を立てて焦《こ》げはじめました。
「こいつは堪らない、これこそ真に驚きました」
 金公は、天下の一大事とばかりに、その火を払い落しにかかると、因果なことにはそれが膝の上へ落ちたものだから、みるみる膝の上が焦げ出して、
「熱《あつ》! 熱! 火水《ひみず》の苦しみ」
と叫びを立てました。しかし、お絹はよくよく腹に据《す》え兼ねたと見えて、それほどに苦しがる金公の羽織の袖を少しも放さず、第二の炭火を取って、今度は左の方の袖へのっけてしまいました。つまり火事が三方から起ったわけですから、金公、悲鳴を上げて苦しがり、
「おいたずらが過ぎます、いくら金公にしましても、これはあんまりでございます、もうこの羽織は着て行かれません、この羽織を両国へでも着て行ってごろうじませ、それこそ焼き殺されてしまいます、ああ、どちらへ廻っても絶体絶命でございます、おゆるし下さい、この通りでございま
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