あっては恥でございますが、西郷どんのは、馬術不鍛錬で馬に乗れないのではなく……つまり、あの人のキンタマが大き過ぎて、それで馬には乗れないんだそうでございます」
「なに、キンタマが大き過ぎて馬に乗れないのか。西郷という奴、そんなにキンタマのでかい奴かなあ」
「は、は、は……」
と七兵衛が笑いました。西郷隆盛もここでキンタマの棚おろしをされようとは思わないでしょう。
そうして神尾主膳が、西郷のキンタマに、ザマあ見やがれ、という表情をして痛快がったのが、この場合、七兵衛をして、失笑させてしまったものと見えます。それを笑ってしまってから七兵衛が、
「ところで、あんまり、のろくさい旅ですから、何か一つ、いたずらをして上げようと思って、すき[#「すき」に傍点]をねらってみるにはみましたが、すき[#「すき」に傍点]がありそうで、その実、少しもすき[#「すき」に傍点]がないのには驚きましたよ」
「ふん、お前の眼で見てすき[#「すき」に傍点]が無いんじゃ、やっぱりすき[#「すき」に傍点]が無いんだろう、悪いことをする奴には、油断もすき[#「すき」に傍点]もありゃしない」
七兵衛はそれを打消すように、
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