中へ先触れをして歩いたらどんなものだ」
「おっしゃる通り江戸中へ、その先触れをして歩くつもりでございますが、その封切に、こうして殿様のところへ上りました」
 七兵衛が、どこまでも真面《まがお》だものですから、主膳も、いよいよ笑止《しょうし》がって、
「そうして、その火元というのはどこなのだ」
「ええ、それは芝の三田の四国町の薩摩屋敷なんでございます」
「ははあ……」
「あすこが、どうしても、近いうちに起る江戸中焼払いの火元になりそうなんでございます」
「ふーん。そうして、その放《つ》ける奴は誰だい。焼けない先の火事がわかるくらいなら、その放け火をやる奴も、あらかじめわかっていそうなものだ」
「それも大抵、わかっています」
「ははあ、犯罪の無い先に、犯人の目星がついたんだから、奇妙だ。ところでその犯人は七兵衛、お前じゃあるまいな、まさかお前が薩摩屋敷から始めて、江戸中へ火をつけて歩こうというんじゃあるまいな」
「どう致しまして、わっしどもには、そんなエライ仕事ができません。できたところで、お江戸の町に対して、それほどの恨みがございませんもの」
「して、その放火《ひつけ》は誰だ」
「それは
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