大変で、これは夕方から始まりましたが、小石川片町から出まして、翌日の九時過ぎまで焼けつづき、炭町の竹河岸で止まりました。長さはおよそ一里十余町、町数にして二百九十余カ町――その次に大きかったのが昨年の……」
「もうよろしい。七兵衛、お前は田舎《いなか》にいながら、江戸の火事の焼け抜いた抜け裏まで知っているようだ」
「火事は好きだもんですから、駈け出して見る気になるんでございます。好きというのも変ですが、ついあの威勢がいいもんでございますからなあ」
「まさか、お前が、田舎から飛び出して来て、火をつけて歩いたわけじゃあるまい」
「御冗談《ごじょうだん》でしょう……」
「それに七兵衛、お前は、年代記に載っている火事を心得ているのみならず、これから焼けようという火事まで知っているのか」
「へへへへ……そこでございますよ。その通り、七兵衛に限って、これから起ろうとする火事まで、ちゃあんと心得ているのみならず、その火元まで突留めて来てあるんでございます」
「ははあ、まだ焼けない火事の火元まで、お前は知っているんだな」
「よく存じております」
「そりゃあ、どこだい。知っているなら人助けのために、江戸
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