散霧消することは今にはじめず、外へ遊びに出るにはこの額の傷が承知しないし、よし額の傷が承知しても、どこへ遊びに行こうという興味も起らないのは、すでに世の遊びなるものを仕尽しているからであります。
 その結果、彼の頼もしい友人たちと企《くわだ》てた大奥侵入の空想も、七兵衛の身を以て虎穴《こけつ》を探って来た報告によれば、どうしてどうして、伊賀流の忍びの秘術を尽したって、容易なことではない――ということを知ってみれば、果ては憮然《ぶぜん》として、苦笑いが、高笑いとなって止むだけのことでした。そうしてみると、もうこの人生で、この男の行楽のやり場というものは一つもない。ところでこうして、手持無沙汰をきわめた閑居のやむなきにいると、お絹という女が、あれでなかなか干渉をする。
 自分は御覧の通りの体《てい》たらくであるのに、主膳のこととなると、酒を飲むことから、外出することにまで干渉する。いっぱし、自分が監督者気取りで納まっているようにも見られる。臍《へそ》が茶を沸かすことといえば、臍が茶を沸かすことに違いないが、それだけまた相当に親切気を見せ、いたわるのだから、今のところ、あの女の手一つに、主膳
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