く金椎《キンツイ》が紙を持って来て、二人の前に提示しました。それを読むと、
「茂チャン帰リマセン、ミドリサンモドコカヘ行ッテシマイマシタ」
十六
清澄の茂太郎が、ふと蘆笛《ろてき》の吹奏をやめて、黍畑《きびばたけ》のあなたを見やった時、せっかく、首をふりかけた表情のない動物が、愕然《がくぜん》として恍惚《こうこつ》から醒《さ》めて、のどを鳴らしはじめました。そこで、黍畑のあたりを見ながら、例の卒塔婆《そとば》を折りくべて、茂太郎は反芻《はんすう》の歌をうたい出しました。
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神のことごと
つがの木の
いやつぎつぎに
天《あめ》の下《した》
知ろし召ししを
空にみつ
大和《やまと》を置きて
青丹《あをに》よし
奈良山《ならやま》越えて
いかさまに
思ほしめせか
天離《あまさか》る
鄙《ひな》にはあれど
石走《いはばし》る……
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ここでは中音《ちゅうおん》で歌いました。
これは、お雪ちゃんからの伝授であろうと思われます。今まで、いつどこで、茂太郎が万葉集を習ったということを聞きませんから、月見寺にいる時にこそ、お雪ちゃ
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