ていることさえが不安でたまらないらしく、兵部の娘にもその恐怖を移して、警戒を試みようとするのを、兵部の娘は落着き払って、
「あら、ここに足あとがあるわ」
すり抜けて先へすすみました。
十五
それとは知らず、駒井甚三郎と田山白雲とは、食堂の卓子《テーブル》を中にはさんで、しきりに会話の興が乗っておりました。
マドロス氏はいかにと見れば、室の一隅の横椅子に背をもたせかけて、いびき[#「いびき」に傍点]を立て、仮睡《うたたね》しているところはたあいないものです。
駒井と、田山との会話が、しきりにはずむといううちにも、ほとんど駒井の諄々《じゅんじゅん》たる説明を、田山が頻《しき》りにうなずきながら聴取しているといった方がよいでしょう。
駒井の語るところは、海に関する物語でありました。海に関する物語につれて、当然、船と、魚とのことに進んでいるようです。
「そういうわけで、北緯五十度というところが日本の国境なんですが、それは寒い、冬になると氷と雪とが全く道をうずめて、人馬の往来はなり難いのです。しかし、この地球の上でです、一般にその通り、北緯五十度あたりは寒くて、ほ
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