ろ進んで助けに来てくれてもよかりそうなものを、いち早く逃げ出した気が知れない――と、茂太郎は、自分のいただく般若の面の威力を知らないものですから、海女の挙動を不審なりとしました。
 竹木をいいかげんに組み合わせて、物干台をつくり、それに着物をあんばいして乾かしている間に、茂太郎はふと、その袂《たもと》から蘆管《ろかん》を探り出しました。いいものを見つけたとばかりに、その蘆管をとって、火にあたりながら吹きはじめました。
 茂太郎は、随意に、随所のものを利用して管絃《かんげん》をつくり、随意に鳴らすことを得意としています。洲崎《すのさき》の浜で、この蘆管をつくり、番所の庭で吹いていました。
 その時に、田山白雲が、その笛の音を聞いて茂太郎のために、こういう詩を吟じたことがあります。
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遼東《れうとう》九月、蘆葉断つ
遼東の小児、蘆管を採る
可憐《かれん》新管、清《せい》にして且《かつ》悲《ひ》なることを
一曲|風《かぜ》飄《ひるがへ》りて、海頭《かいとう》に満つ
海樹|蕭索《せうさく》、天|霜《しも》を降らす
管声|寥亮《れうりやう》、月|蒼々《さうさう》
白狼河北、
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