一基の石塔を押据えてしまってから、海の女は、その石塔の前で火を焚《た》きはじめました。これは迎え火というものでもなく、また送り火というものでもありますまい。
散乱した漂木を集めて火を焚きつけた上に、折れて散った卒塔婆まで掻《か》き集めて加えたところを見ると、これが、後生とか、追善とかを意味する火でないことがわかります。
ところが火が盛んになって、これならばという時分になると、その女は、火をそのままに残して置いて、自分は海岸へ出てしまいました。
海岸の砂浜のところへ出た上は、よく注意して見さえすれば、たった今、清澄の茂太郎が踏み荒した小さな足あとが見えなければならないはずですが、そんなことにはいっこう気がつかず、海の女は、海岸へ出ると、帯を解き、着物を解いて、見るまに素裸の形となってしまいました。
海女《あま》が裸になるのは、少しも珍しいことではありません。裸にならないのが、かえって珍しいくらいのことであります。だけれども今時分、何のために海へ入ろうとするのか知ら。無論、海水浴という時候ではないにきまっているけれど、海女が海中に入るのは、時候を選ぶという約束もないはずです。そんな
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