、眼か、いずれかの器官かによって脳髄にうつったものが、時あって、口をついて現われるのは、頭脳の反芻《はんすう》とは言わば言うべきものですが、時によっては、意外なる消化をもって、全く、独創的に現われて来ることもあれば、記憶そのままが、すんなりと、暗誦《あんしょう》の形で現われて来ることもあるのであります。
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古への人に我ありと
近江の国の……
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 ここまでは、はからず口をついて出たでたらめでありますが、近江の国の……と口走ったところから、
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近江の国の
ささ波の
大津の宮に
天《あめ》の下《した》
知ろしめしけむ
すめろぎの
神のみことの
大宮はここと聞けども
大殿はここといへども
春草の……
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と咽喉《のど》が裂けるほどの声で歌い出しました。これは創作でもなければ、出任せでもない。故郷の荒廃を見て、豪邁《ごうまい》なる感傷を歌った千古不滅の歌であります。
「あっ!」
 この豪邁なる感傷の歌を声高く歌って、暮れ行く海の表《おもて》をながめている時、不意に潮が満ちて来て、その足もとを洗ったものですか
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