やくのことに宿を立ち出でて、例の通り駕籠《かご》に乗り、若いのが駕籠わきに附添って、そうして、この唐人小路の思いがけない曝《さら》し物のところまで来て、そのさらし物の世迷言《よまいごと》が耳に入ると、グッとこたえてしまいました。
「いやな声が聞えるじゃないか、耳のせいか知らないが、甲州の猿橋《えんきょう》の下へつるされたやえんぼう[#「やえんぼう」に傍点]が、ちょうど、あんな声を出していたよ」
と、垂《たれ》を手あらく掻《か》き上げて、
「見られたザマじゃない」
 駕籠を出て来たお角は、がんりき[#「がんりき」に傍点]の傍へ寄って来て、
「何という業《ごう》さらしだい、そのザマは……」
と呆《あき》れ返りました。
 呆れ返ったうちには、歯痒《はがゆ》くってたまらない思い入れもある。
「傍へ寄っちゃあいけない」
 例の六尺棒が、お角の出端《でばな》を押えようとするのを、お角は丁寧《ていねい》に、
「御免下さいまし、実は山崎譲先生から、お許しをいただいて参ったのでございます」
「ナニ、山崎譲さんから」
「この通りでございます、一切、みんなお返しをしていただいて参りました」
「なるほど」
 
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