いい鉄砲を持っている方が勝ちにきまっているが、そのいい鉄砲は、外国からでなければ来ない。外国からいい鉄砲を仕入れるには、いい船を持たなければならない。
 いい船を持って、いい鉄砲を買込んで、これを盛んに売れば、人に戦争をさせておいて、自分が丸儲けをする。
 おじさん、日本一の金持になろうと思えば、これよりほかの道はあるまい、と忠作がしたり顔である。
 なるほど……七兵衛は、煙にまかれながら、サゲすみきって聞いていたが、こいつ、金儲けの前には、義理も、名分も、そっちのけ、その抜け目のないことにおいては、実際おそろしいほどだと舌をまき、
「忠どん、人に戦争をさせておいて、自分で丸儲けをしようなんていうのは、泥棒よりボロい商売だぜ」
と言ってみたが、七兵衛も、われながらマズい半畳だと思いました。
「ナーニ、おじさん、戦争をする人は、戦争をするように出来ている。金儲けをする者は、するような仕組みでするんだから、ちっとも恥かしいことはないさ。泥棒なんざあ、お前さん、馬鹿のする仕事さ、人に隠れて、コッソリとやって、見つかれば首が飛ぶ、それでいくら儲かるもんだ、泥棒のかせぎ高なんて、知れたもんじゃな
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