目のつけどころだということ。
 とりあえず自分の仕事は軍器の御用商人で、つまり、戦争が長引けば長引くほど儲《もう》かる。
 そんなことをして、江戸にいながら、薩摩の屋敷へ武器を売込んだりなどすれば、江戸の方に恨まれて、ヒドイ目に逢うぞ……と、七兵衛がオドかせば、なあに、商人《あきんど》だもの、どっちでも割のいい方へ売る分には文句はないはず、今、逆縁のようなわけで、薩摩の家に取入ることができて、刀剣と、鉄砲との、買入れ方をたのまれたから、薩摩の御用をつとめているようなものの、これが、薩摩が江戸から追っ払われて、江戸の風向きがよくなれば、よろこんで江戸へお味方をして、御用にありつくまでのことさ……と忠作は、事もなげに放言する。
 そうしてなお言うことには、今こうして来た刀は、みんな駄物ばかりだが、今は駄物だの、名刀だの言っている時節ではない、数さえ多ければ何でもいい。鉄砲だってその通り、ここに集めて来たものは、大抵はチグハグや壊れ物だが、これを修繕して売込むと、立派な値段で買ってくれる――だが、本当に仕事をしようというには、こんなことではまだるくて仕方がない――どのみち、これからの戦争は、
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