の同意を求めにかかる。
ことあれかしと期待しているこの連中が、主膳の秘策なるものに共鳴せずという限りはあるまい。
秘策といっても、それは別のことではない、われわれ世間並みの女という女を相手にしつくした身にとって、この上の快楽として、大奥の女中を相手にして遊んでみようではないか、というだけのことであります。
こういうたくらみは、今までしばしばこの連中の想像にも上り、口の端《は》にも上ったのですから、特に奇抜な思いつきでもなんでもないのですが、この際、本気になって実行にとりかかろうという事の密議が、一座の者の固唾《かたず》を呑ませるだけのものであります。
後宮三千というのは支那の話。事実、千代田の大奥に、ただいまどのくらいの女中がいるか知らないが、それらはみな、女護《にょご》の島《しま》の別世界をなして、幸いを望んでいる。
密議半ばで、一座のいなせなのが、あんどんに向って、独吟をはじめました。
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一肌一容《いつきいちよう》、態ヲ尽シ妍《けん》ヲ極メ、慢《ゆる》ク立チ遠ク視テ幸ヒヲ望ム。見《まみ》ユルコトヲ得ザルモノ三十六年……
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そ
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