が、狼狽から、いよいよ恐怖がわいて来た。
「行っておしまい、誰か来て下さい――」
二度《ふたたび》大声をあげると、娘は腰から下にかけていた毛布をとって、そのまま力を極めて大の男に投げつけたものですから、大の男がまた大あわてにあわてて、その毛布を取除こうとして、かえって深くかぶり、一時は非常に狼狽したが、やがてそれを取払うと、娘が、
「誰か来て下さい――」
四たび叫びを立てたものですから、大の男が堪《たま》らなくなって、その口をおさえました。口をおさえるにはまず右の腕をのばして、軽々と自分の胸のところまで引きつけて、そこで口をおさえると、娘が、両足をジタバタとさせてもがき[#「もがき」に傍点]ました。
こうなった時に、ウスノロ氏に、はじめて本能的の兇暴性がグングンと芽をのばしたように、
「あれ誰か来て――」
その声を、今度は鬚面《ひげづら》でおさえてしまいました。
大の男はそこで、娘の顔に向って、メチャメチャに接吻《せっぷん》を浴せかけようとする。娘はそうはさせまいと争い且つ叫ぶ。
十六
しかし、人生は、そう無限に闖入者《ちんにゅうしゃ》にのみ兇暴性をた
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