膳は、このごろは昔と打って変った謹慎の体《てい》であります。
謹慎でなければならぬように、すべての都合が運んでいるところへ自分もまた、つくづくと半生の非を悟った。これからの生涯を蒔《ま》き直そうかと考えているらしい。
この男は、悪友と酒癖《しゅへき》さえなければ、転回の余地がないという限りはない。今、斯様《かよう》にかけ離れたところに来ていれば、悪友の押しかける憂いもなし、酒は自ら悔いているくらいだから、断じて盃を手に取らぬという堅い決心をきめているのです。それに、悪友と酒癖とからこの人を遠ざけた一つの大きな理由は、例のお喋り坊主の弁信を、巣鴨の化物屋敷で井戸の中へ投げ込もうとした時に、釣瓶《つるべ》が刎《は》ねて受けた傷、眉間の真ン中に牡丹餅大の肉を殺《そ》ぎ取られて、生れもつかぬ形相《ぎょうそう》となってしまった。それ以来、世間へこの面《かお》を曝《さら》すことが業腹《ごうはら》で、思いきって旧領地の縁をたどり、ここへ引込んでしまったのだから、今の謹慎も実は、その面部の大傷がさせた業《わざ》と言うべきものです。それと、もう一つは、財政がもはや全く枯渇して、化物屋敷の類焼以来は、
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