えぞ。遠吠え専門の痩犬は何万匹あろうとも、ほんとうに強い犬というのを殺すのは惜しいなあ、手前もちっとは自分の身が惜しいということを知れ」
米友の声がうる[#「うる」に傍点]んできた時、お松が戻って来て、
「友さん、それでは、どうかこっちへ来て下さい」
見事なその一間、絹紬《けんちゅう》の夜具に包まれて、手厚い看病を受けているお君の身は、体面においてはさのみ不幸なものとはいわれません。
米友が来たと聞いて、その美しい、衰えた、淋《さび》しい面《おもて》に、このごろ絶えて見たことのない晴々した色が浮びました。
「お君さん、友さんが来ましたよ」
「どうも有難う」
力のない身体《からだ》を向き直すつもりで、鉢巻をした面《かお》だけをこちらへ向けると、米友は無言のまま、そこへ坐り込んでいます。
「友さん、よく来てくれましたね」
「うむ」
「わたしはね、頭の方は癒《なお》りましたけれど、身体はもう駄目なのよ」
「…………」
その時に、お松が米友に代っていいました、
「そんなことはありませんよ、産後ですもの誰だって……」
「いいえ……」
お松も信じては力をつけられない。お君も気休めの言葉
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