ればこの武士たるものは、極々上の達人でなければならない。こういう芸当は、覚え以上の腕がなければできない芸当である。さればこそ米友に講和を申込んで、その手腕を閑却することができなかったのも道理がある。しかし米友は、前途の急を説いてせっかくの好意を辞退したが、件《くだん》の武士たるものは、では近いうちぜひ遊びに来給え、住所姓名は、神田お玉ヶ池のなにがし[#「なにがし」に傍点]とたずねてみろと教えてくれました。
二十四
浅草御門を両国広小路、両国橋を渡り終って、ほどなく相生町の老女の屋敷に着いた宇治山田の米友。ホッと息をついて裏門の潜《くぐ》り戸《ど》を押すと、迎えに出でた真黒な豪犬《おおいぬ》。
「おお、ムクか、久しぶりだ、久しぶりだ」
提灯《ちょうちん》を持ち換えて、ムク犬の首を撫《な》でてやる宇治山田の米友。
「友さん、よく来てくれましたね」
そこへ走り出でたお松。米友を案内して一間へ通すお松の眼には涙がいっぱいです。この気丈な娘にしてこの悲しみ、米友もなんとなしに情けない心に打たれて悄《しお》れました。
「友さん、お君さんがもういけないのですよ」
「ど、ど
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