主にかえしてくれた親切を米友として、ここへ来て思い出さないはずはありません。
 あの女はどうしている。まだ鐘撞堂《かねつきどう》新道《しんみち》の相模屋にいるはずだが、そうだとすれば今晩もここへ稼《かせ》ぎに出ているかも知れない、と思って米友は、河岸の柳の蔭、夜鷹の掛小屋をいちいち覗《のぞ》いて歩きました。
 けれども、お蝶らしい女を発見することはできないで、腐れた肉を貪《むさぼ》る有象無象《うぞうむぞう》の浅ましい骸《むくろ》を、まざまざと見せつけられたに過ぎません。
 あれだけの容貌を持ち、あれだけの心立てを持ちながら、あの境遇に甘んじて、それを抜け出そうともしない女の心が悲しい。
 そこを過ぎ去って、杉の森稲荷から郡代屋敷、以前女が殺された所、盲法師《めくらほうし》の弁信とお蝶とが連れ立って通りかかった時、自分はムクと共にあちらから駈けつけて見たけれど、その人は煙の如くに消えてしまった。
 あの身体で、あの目で、夜な夜な人を斬らねば眠れなかったその人もどこへか行ってしまった。その翌日病み疲れた枕辺《まくらべ》に立って――地団太を踏んでみたけれど、彼はどうしてもその人を憎む気になれ
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