足《びっこ》を引いて歩んで行きます。
米友としては、たとい、お君の行動に憤《いきどお》りを含むとはいえ、妊娠のことも聞いている、病気のことも聞かないではない、九死一生を訴えられてみれば、行かぬのは義において欠くるところありと考えたのでしょう……しかし、心は決して打解けているわけではありません。
今日は、なかなか多事の日である。あれから足利の絵師田山白雲に引っぱられて人気者の中を横ぎり、奴鰻《やっこうなぎ》で一杯飲みながら――米友は飲まないけれども――その絵師の縦横の画談を聞きつつ、彼が自分を床の間に立たせて、写生を試みている熱心な態度を思い出してみると、尋常な絵師とは思われません。今こそ落魄《らくはく》はしているが、後来必ずや名を成すのは、あんな人だろうなんぞと米友は考えました。
やがて、柳原河岸近くまで来た時分、ここは貧窮組《ひんきゅうぐみ》の騒いだところ。自分が金包を落して、それを夜鷹《よたか》のお蝶に拾ってもらったところ。そのお蝶こそ恩人である。大事な節操を、二十文三十文の金で切売りをして恥じない夜鷹の身でありながら、人の落した大金は大切に保存して、苦心を重ねて、それを落し
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