が持って来たんですが、待ち切れないと見えて、御当人が、わざわざおいでになりましたよ」
「うん」
といって米友は、周囲の雲行きに頓着なく、その場で封を切って読んでみると、
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「米友さん、あなたのいらっしゃる所を、今日道庵先生からお聞き申しましたから、大急ぎでこの手紙を差上げます。手紙をごらんになりましたら、すぐにおいで下さいまし、お君さんが危ないのです。ぜひ、生きている間にもう一ぺん米友さんに会いたいといっていますから、今までのことは忘れて来て上げてください。これを聞いて下さらなければ、私が一生恨みますよ」
[#ここで字下げ終わり]
 読んでしまうと米友が、暗い心になりました。伊勢の古市《ふるいち》以来、幼馴染《おさななじみ》のお君が、今、九死の境にいる。駒井能登守にだまされて、身を誤った女であるけれども、こういう場合にこういわれてみれば、さすがに米友もひとごとではない。

 再び伝通院の学寮を立ち出でた宇治山田の米友。以前と違って笠をかぶらないで、「伝通院学寮」の提灯《ちょうちん》を腰にはさみ、例の杖槍はてばなすことなく、門を出て本郷の壱岐坂《いきざか》方面へ、跛
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