表現を異にしようとこう考えているのだが、その粉本《ふんぽん》に苦しんでいる……ところが今、計らず君に出逢って見ると、まさにこれ天より与えられた模型である。どうか君、拙者のために時間をさいてくれ給え。君の住所を聞かしてくれれば拙者が出向いて行こう、君の方にさしつかえなければ拙宅へ来てくれてもよい……ナニ、三日目に旅に出る? それでは、ぜひ、今日のうちに、ちょっとそこで輪郭だけを取らしてくれ給え、頼む!」
米友は、この無作法な物の頼みも、その中に籠《こも》る真実性に動かされたものと見え、絵師の頼みに同意を与えると、絵師は喜んで道具を畳んで妻子を返し、自分は米友を誘うて人気者の行列を突切りました。
二十三
宇治山田の米友は、夜になって、その宿所なる小石川の伝通院の学寮へ帰って来ました。現在の米友の仕事は、ここで、雑巾《ぞうきん》がけをするだけのことですが、そのうちに、寺侍たちが、いつか米友の槍の達人であることを知って、今では折々その師範役を兼ねているような有様ですから、寺内でもなくてならない人のようになっています。
「遅くなって申しわけがねえ」
と米友が詫言《わびご
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